「ン、とら、トラ男…ッ」
ルフィの甘い声と、苦しげな吐息が狭い室内に響いて、ローの鼓膜にダイレクトに届く。
望んでいたシチュエーションに、興奮が収まらない。
「心配するな、麦わら屋」
ルフィが自分だけを視界に映している。
すごく心地よい。誰にも邪魔されない時間なんて久しくなかったから。


街の外れにあった宿につくと、ひとつ部屋をとった。
麦わら帽子の船長はサニー号以外の場所でも大抵はしゃぐらしい。置き物とか、額縁とか。何でも、ものめずらしそうに観察してまわる。

それから、交互にシャワーを浴びた。最初はルフィ。次は自分。下はボトムだけ履いて、タオルで髪を拭きながら部屋に戻る。
バスルームの扉が開くと、身構えてたようにルフィがビクリと跳ねた。そんなに反応されると、こちらが悪い事をしている気分になる。
ローはその姿に苦笑してから、緊張してどうしようもなくなったルフィに時間をかけてキスしてやる事にした。

ちゅる、と唾液が混ざり合う水音がして、ローの熱い舌がルフィの口内を犯していく。
「…ッ、おれ、ヘンなかんじ…」
いやか?と聞くと、ふるふると首を横に振って否定する。風呂上がりの身体がまだ火照っていた。
「でも、なんか、全然わかんなくて、こえぇ」
自分の身体なのに。とルフィは目縁を潤ませた。怖がらせないように目の下の傷跡と、涙を舐める。

「俺は医者だから、意味のない痛めつけはしない。お前のペースでいい」
きゅ、とルフィの身体を抱きしめると、おずおずと抱きしめ返してくる。
「でも、すげぇトラ男の匂いがして安心する。おれ、トラ男の匂い、好きだ」
ルフィのこういうストレートな所にローは弱かった。胸がぎゅっとなって、興奮する。

「かわいいな、麦わら屋」
たまらず首筋にキスを落として、鎖骨を舐めた。
「ぅ…ッ!あ、おい!」
赤くなった耳も可愛がる。
甘噛みして、淵をなぞる。
「何でそんな所…ッ、舐める、ぅあ…っ」
「そういうもんなんだよ。こうしてたら、ドキドキして来ないか?」
勿論唇にも忘れずにキスをする。んん、と鼻に掛かった声がでた。
「おれ、トラ男にかわいいって言われたらダメだ。その度にドキドキしてむずむず、する…」

「……っ、」
ああ、なんて威力で俺を誘う男なんだ。
ことごとく首の皮一枚でかろうじて繋がってる、ローの理性をぶっ壊しにかかってくる。
「お前、可愛すぎんだろ…、ばかなのか?」
「…う、ばかじゃねぇぞ!」
ルフィが上目遣いで一生懸命、抗議してくるので、そうか、と笑う。
キスだけで息を荒げて、目尻を潤ませるなんて、おれを煽る事に関しては天才的な才能をお持ちのようだが。
そんな恋人を前にして、まだ脱げぬボトムの中ではロー自身もゆっくりと主張し始めていた。

かわいいぜ。かわいいなァ、麦わら屋。ルフィが照れるのがイイので、しつこく繰り返す。
「や、やめろよ!」とそのうちルフィが拗ねてしまいそうだったので、お預けをくらうまえに軽くキスをした。
「はは、悪かったな」
ローはいよいよ本格的に、この可愛い恋人に触れる事にする。

唇や頬にもキスを落としながら、意外とある腹筋を手のひらでいやらしく撫で回していく。
そのままローの両手は、ルフィの腹から胸にかけて走る、クロスした傷跡を優しく辿って上へ昇っていった。
その間もルフィはずっと声を我慢しているらしい。背中を掴む指先に力が入って、身体は微かに震えている。
感じてる声が聞きたくて、胸を飾るピンク色のふた粒に到着すると、ローはそれを両の人差し指で軽く弾いた。
「――ンンッ!!ふ、ア、アッ」 
親指と中指で転がすように捏ねると、ルフィは、身体をよじって押し寄せる快感から逃れようとした。耐えられなかった声が吐息と共に漏れる。
キスを続けていた唇を離すと、ルフィの瞳が不安に揺れて、目の端が赤くなっていた。
「こうするとドキドキして、どこがむずむずする?」
「――っ、わかんね…ぇよっ、う、ア!」
ルフィの身体がぴくんと跳ねる。今度は胸の粒をローが唇で挟んで、吸い付いたからだ。
ちゅ、と音がする。その後はねっとりと唾液を絡ませながら、舌の腹で全体を舐めた。
ルフィは乳首が感じるのか、一際高い嬌声をあげて、ローの背中、タトゥーの入った辺りに短い爪を立てた。痛くなんてない。ルフィの全てを感じたいから。ほら。

「ここに、全部来るだろ」
「ぁう…!う、トラ男、そこダメだ…っ!」
キスしてた時からずっと張り詰めているのを知っている。言い訳はさせない。
ルフィの真ん中を、ローは人差し指と親指で強く擦り上げた。
ハァ…ッ!と、ルフィはそれだけで睫毛を震わせ、色のついた声を上げる。

ダメじゃない、もっと気持ちよくなる。と、ローは邪魔になったルフィのボトムを下着ごと一気に引き抜いた。
「なにすんだ!トラ男!ちょ、待て…!」
守るものが無くなって、露わになる。
ルフィ自身も、下着も、もう先走りでぐずぐずになっていた。
顔を真っ赤にして、大きな瞳にはいっぱい涙を溜めている。ローを煽るにはもう、ルフィは申し分ない姿だった。

「旨そうだな、麦わら屋」
その姿にごくりと生唾を飲む。小さ過ぎず、大き過ぎず、主張してるルフィのそれを、ローは迷わず口に含んだ。
「――ッアア!いや…だっ!やだっ、トラ男!」
お構いなしにべろりと舐め上げて根元を軽く擦る。嫌だと言いながらも、ルフィが僅かに腰を揺らし始めて、太股が震えだした。
無意識なんだろうが、とてもエロい。
「とら…っ、も、やだ、何かヘン!でるっ、出るぅ…っ!!」
涙をぼろぼろ零してこちらに訴える。始めての快感と感覚に、戸惑っているのだろうか。
かわいい。堪らない。
いっぱい出せばいい、と言ってやる。
じゅぶじゅぶと音を立てながら、先端の窪みに舌をぐりぐりと這わせた瞬間、ルフィの精が勢い良く弾け飛んだ。
「う、ア、ぁあっ…!やだぁ!」
ルフィの指先が、脚の間にある短く跳ねた髪の毛を掴む。右手と口の中で達したそれが、びくびくと暴れだして、ローの鼻腔に青臭くて愛しい匂いが抜けた。
汗ばんだルフィの両脚には力が入って、ぎゅうっとローの身体を挟み込む。

「お前の初めては格別だな」
ローはごくりと喉を鳴らし、放たれたものを全部飲み込むと、初めての射精に息を切らす恋人の上へと重なった。
「も、信じらんね…っ、トラ男の、ばか男!」
涙でぐちゃぐちゃになった顔を枕で隠してるのが余計にかわいい。
だが、ばか男はいかがなものか。

「気持ちよくなったか、麦わら屋」
う、と小さく唸って枕の隙間から少しだけ瞳が覗いた。まるで手負いの獣のように警戒されている。これじゃあ無理やり最後までとはいかず、今日はお預けだろうか。
まぁ、触るのを拒否されなかっただけ、初めてにしては上出来か。自分の処理は後で済ませばいい。
汗で額に張り付いたルフィの髪の毛を、ローは優しく撫でつけた。
今日はもう寝ろ。そういうと、え!と口を開け、ルフィがガバッと飛び起きた。

「トラ男は!?お、俺は大丈夫だから、トラ男のしたいこと最後までしよう!」
眉を下げて、ルフィが潤んだ目で見つめる。
「無理するな、別に急ぐことじゃない。」と返すが、こう言うときのルフィの気持ちがブレることは余り無い。頑固なのだ。
「おればっかりしてもらってるのは、なんか、やだ」と言い、おれが触って気持ち良くなるなら、トラ男のことも触りたい。としょぼくれた顔で言われる。
そうなったら、抱きしめざるを得ない。
ローはふぅ、と息を吐き出すと、いつかの言葉を思い出した。
「本当に、わがままは四皇クラスだな」
汗で湿った黒髪に指を差し入れながら言うと、ルフィは頬を赤らめて、へへっ、と笑った。

座ったまま、もう一度キスをする。さすがにルフィも舌を入れられる事には慣れてきたらしい。目がとろんとしてきて、かわいい。
ローのまた硬く立ち上がってきたそれを、ルフィがボトムの上から手のひらでさすった。
「これ脱げよ、おれもやる!」
んべ、と舌を出して見せた。舐めてくれるらしい。初めてのくせして積極的だ。どうせいつもの溢れる好奇心に違いないが。
ローが苦笑しながらルフィに口づけをする。しながら、カチャカチャとベルトを緩め、自身を露わにした。
ルフィがぽかんとしている。それから、顔を赤くして、でっけーと呟いた。
「おい、まじまじみるなら止めるぞ」
余りの食いつきに恥ずかしくなったローはルフィを諫める。照れていたルフィは、はっとして、やだ、とローのそれへ奉仕を始めた。
入らないかと思った口に、するりと飲み込まれていく。ローはゴムの身体って意外と便利なんだな、とぼんやり思った。
ルフィの舌使いは辿々しいが、それが良い。歯は立てないでくれと言うと、ふぁい、と返事が返ってきた。

「…ッ、いいな…」
何よりもルフィが自分のモノを咥えてることが一番の興奮剤だ。ン、ン、と懸命に舐める、その隙間から赤い舌が覗いて最高にエロい。
ルフィが舐めながらうっとりしたように頬を染めた。座ったままのローに対して、ルフィはベッドに身を伏せるかたちでそれを口に含んでいる。
もじもじと崩した脚の間からは、緩く立ち上がっている、ルフィ自身が見えた。
「お前、おれの咥えて興奮してきたのか?」
ルフィが上目遣いに見上げてきて、ン、と鼻を鳴らした。
「わかんね…、熱い…」
ルフィの痴態が、心臓を撃ち抜く。ヤバい。いれたい。願望が思わず声に漏れる。
奉仕の手を止めて、ルフィがローにキスをしてきた。トラ男の好きにしていいよ、と微笑んでくれる。
ばかやろう。止まらなくなるじゃないか。

ゆっくりとルフィの身体をベッドを横たえて、脚を開かせる。
さっき一度イった癖に、咥えてるだけでこんなにビクビク立ち上がらせてる姿に肌が粟立った。先端からは先走りを滴らせて、伝うしずくが割れ目の方までぬらぬらと光らせている。
「少しくらい我慢できるか?」と聞くと、ん、とルフィが答えた。
固く閉ざされたそこを、舌先で徐々に押し広げるようにつつく。
あ、あ、と甘い声をあげ、後ろを舌で弄られると、一緒になってルフィの前もビクビクと揺れた。
舌が淵を一周できるくらいまでに、そこを充分湿らせた後、ルフィの先走りと唾液をたっぷりすくって塗り付ける。
まずは一番長い中指を一本押し込めた。

「――いっ!…っ、ふぁ…ッ、とらおぉ!」
指先からズプリと飲み込まれたので、そのままゆっくりと根元まで差し入れる。
ふ、は、となんとか空気を取り込んで、浅く呼吸を吐いた。その異物感にルフィの顔が歪む。
ローは無理をさせるべきじゃなかったかと、胸が痛んだ。少しでも慰めたいと思い、中で、上の方を擦ってやる。
ルフィは、うう、と呻いて大丈夫、と言った後、そこへ指先が当たったのか、気持ちよさそうな声を上げてローにしがみついた。
「なんだ、ココが良くなったか?」
「ん、ア、なに…?ン、う!」
良さそうにする所を擦りながら、人差し指、薬指と、徐々に本数を増やしていく。
その度、急に増える圧迫感に背中を仰け反らせては、ビクビクと尻を浮かせて浅い呼吸を繰り返した。
ローは励ますようにして、苦しそうな恋人の、身体にキスをする。
「大丈夫か」
「大丈夫だ、やめんな…っ」
ルフィの全身には、じんわり汗が噴き出してきて、それでもローの背中を捕まえて離さない。
自分のために、懸命に応えようと健気に耐えてくれている、と思えば、それは、ローの中で溢れて止まらなくなった。

ルフィ、と名前を呼ぶ度、うわごとのように喘いでは、ロー、と返してくる。
「そう言うとこ、たまんねェな、お前」
「…っ、なんだよ…っ、それ」
ルフィが恥ずかしいと言うように、潤んだ瞳をそらした。
「――アッ、う、ぅあ…ッ」
ようやく指3本をまともに動かせる程度になる。ずっとルフィに合わせて、お預けを食らっているのもそろそろ限界だ。
ローがずるりと指を引き抜くと、あ、とルフィが息を漏らす。自分の指先のタトゥーが濡れて光っていた。
ヒクヒクと弛緩したそこへ、勃ち上がった己自身をあてがう。
ぬるぬると擦り付けると、びくりと肩を揺らす。ルフィはゆっくりと濡れた目でローを見上げて、早くローと繋がりたい、と言った。
ローは一瞬目を見開いたのち、ニヤリと笑う。
あぁ、振り回されてる。と思ったからだ。


「ルフィ、いれるぞ」
「――う、アッ!ろぉぉっ、ハァッ」
ぐ、と先端を押し込めば、指先以上の質量にルフィの顔が歪んでいく。痛みに力が入り、ローの腕をギリギリと掴んだ。
「…っ!力抜け、ルフィ…っ」
中はすごく狭くて、締め付けてくる。ルフィの瞳から、また涙が零れた。汗がローの額から滴り落ちて、ルフィの胸を濡らしていく。繋がった所が熱い。
舌を吸いあい、キスをしながらゆっくりと進めばようやく奥まで、隙間無く、みっちりと埋まった。
大丈夫か。と聞くと、痛てェけど、嬉しい。と笑った。本当に、愛おしい顔をして。
2人はしばらく抱き合ったままお互いの唇を啄んだ。ちゅ、と音を鳴らし、はぁ、と熱い息を吐く。

ゆっくり動き始めると、ルフィの身体がぶるりと震えた。ぐじゅぐじゅといやらしい水音と、ベッドの軋む音が狭い安宿に響いていく。
「―あぁっ!ぅあ、…ン、…っ」
ルフィが声にならぬ吐息を吐き出し、痛みをやり過ごそうとする。慣れてもらおうと、ローが何度か先程のイイ所を突き上げるように動いた。
膝が胸につきそうなくらいに身体が折られ、身体に力の入ったルフィのつま先が、ピンと伸びる。
「ア、ぁあっ…!」
その間では、固くなったルフィの一部が、ローの腹に擦られて、ぼたぼたと先端から蜜を零していた。
「…っ、かわいい…、まずいな、加減、出来ない…」
「やっ、すんな…ッ!も、溶けそう…っ」
触れ合っている場所が、全身熱をもって、混ざり合う。どちらの熱さなのか、どちらの汗なのか、もう境目が無いような気がした。

「う、すきだ…っ、ろー…、すき…!」
ルフィが腕を伸ばして、必死にローの頬に触れる。ローの眉が切なげに下がり、おれも好きだ、ルフィ。そう告げると、脇目も振らずその濡れた唇を貪りあった。



ルフィがもぞもぞと動いてふぁ、とひとつ、伸びをした。
「起きたか」
ローが隣りから声をかける。あれから目が冴えてしまって、眠れなかったのでベッドの背にもたれて、適当にあった雑誌を読んでいた。
ん、とまだ覚醒してないボーッとした顔で、ルフィが目を擦る。
「あれ?…おれ、どうしたんだ?」
記憶が朧気らしい。それはそうだろう。
「最後に、気を失った」
え!と声を上げて、ルフィがこちらへ振り返る。
初めてだったのに無理をさせて悪かった。と言って、くしゃくしゃと頭を撫でた。わわ、とルフィは目をぱちくりさせている。

「トラ男はなんも悪くねェじゃねェか」
ルフィはそう言った。きっと彼は本当にそう思っているので、思ってる事を言ったのだろう。
そうか、と笑うのが精一杯だった。
「なんでだ?別におれは怒ってねェぞ」
まだローが浮かない顔をしているので、ルフィが首を傾げている。ローはそんなルフィを見て、一呼吸置いてから、ぽつりと零した。

「お前の仲間から、船長を取り上げようとしてるのかもな、おれは」
一味全員から愛されてる船長を、他の海賊船の船長である自分が、独り占めしようとしてる事に罪悪感を感じる。けれど、今更抑えられない。
そう言うと、ルフィはしししっ、と笑った。
「トラ男はバカだなー!おれは誰にも捕まらねェぞ!」
ルフィはそう楽しげに言い切ると、勢いよくローに抱きついた。
「おい、ル…っ、麦わら屋!」
そのまま反動で、ベッドに押し倒される。ぼふっとスプリングの弾む音がした。
ローの胸に手を当てて、ルフィが一息空気を吸い込む。まるで匂いを確かめてるみたいだ。それから両腕を支えにして、がばりと起き上がると、
「だから、おれがトラ男を捕まえる!」
目を輝かせて、ルフィは自分の下にいるローにそう、宣言した。ルフィはそのまま、にっ、と歯を見せて笑う。

正直ドキッとした。離れたらそのまま忘れられてしまうんじゃないか、と思っていた。進むべき方向も、仲間も、違うから。
けれどいつだってこの男は太陽みたいに明るくて、そして、強いのだ。

「七武海を捕まえるなんて、大した海賊だな」
くつくつと、ローも一緒になって笑い出す。
「おう!ほりょ、ってやつだぞ!」
ルフィが元気よく返事をして、寝転がるローに口づけた。触れるだけの軽いキス。触れ合ったそこからは、熱が一気に広がった。

「はは、何言ってんだ、麦わら屋」
ルフィがしししっ、と笑う。独り占めしたいと思う気持ちには変わりはない。そして、おれはこいつの全部を手に入れたいんだ。今まで抱いた女にだって、そんな風に思った事はなかった。
楽しそうにしている恋人へ、腕を伸ばす。そうすると、指先が赤らんだ頬に触れて、この手の中に、ある。

「おれ、仲間と一緒にいる時の幸せとは、違う幸せを、ローと一緒にいる時に感じるんだ」
ルフィがローの手を取って、自分の左胸に当てる。
「お前といると、ここがドキドキしたり、ぎゅうってしたり、なんか気持ち悪りぃけど…」
触れた手のひらからとくとくと鼓動が聞こえた。
「やっぱりローが大事だ!」
えへへ、と笑って、ぎゅーっと抱きつく。
…どうやら、心配は無用らしい。

しばらく頭を撫でてやると、胸の上からすうすうと寝息が聞こえてきた。
捕虜の最初の仕事は枕役だったか。ふ、と一人笑って、目を瞑った。

先程眠れなかったのが嘘みたいに、睡魔がやってくる。きっとこの重ねた体温のせいだろう。
まだ夜明け前なので、もう少し、このままで居られる。
今はその伝わる温もりを、確かに感じながら。


おれはこの温度をずっと、手放したくないと思った。


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